「『アンサンブルを春風に乗せて』」  
プリズムリバー三姉妹、その長女である ルナサ・プリズムリバーの言葉とともに、演奏は始まる。 メルランがトランペットでスタートを切り、ルナサがヴァイオリンの音色を乗せる。 最後にリリカが鍵盤を叩き、ピアノの旋律を会場全体に響かせる。 三姉妹の奏でる音楽に、観客たちが沸き立つ――そんな、いつも通りのライブシーン。 盛り上がってはいるが、三姉妹の求める音には届いていない。リリカがそう思っていると……。
「え……? もう春なのに、 こんなに雪が降るなんて……」  
冬の到来を知らせるはずの、白くて小さな訪問者。季節外れの現象に会場はざわつき始める。 湿気を嫌う楽器の天敵ではあるが、リリカの顔に浮かぶのは、嫌悪ではなく愛好だった。   「ようこそ、季節外れのお客様! 春の暖かさを、
どうぞその身で感じていってくださいな!」
雪の音無き音を旋律に乗せる。雪の静けさに反した明るい音が、会場を包み込み始めた。 リリカのアドリブにルナサとメルランは驚きつつも、すぐに旋律を彼女に合わせていく。 雪に彩られたライブは始まりから終わりまで最高潮。 今日もプリズムリバー三姉妹のライブは割れんばかりの拍手の中で終わりを迎えた。  
「あー、楽しかった! 来年の春も、 今日みたいなライブができるといいなあ」  
きっと、来年も雪は降る。遠い春に会うために。  
「やりましょう、来年も」
ルナサの微笑みにつられるように、三姉妹は空を見上げた。