「――では、あなたが望む鶏たちの地位向上とは、
具体的にどのようなものなのでしょうか?」
空を飛び回りながら、文は久侘歌への取材を開始した。
しかも久侘歌を追いかけるのではなく、彼女の前を飛びながら。
速さに自信のある鴉天狗、いくら取材中とはいえ、空で後れを取ることは彼女のプライドが許さない。
久侘歌は文の後ろを顔色一つ変えずについていきながら、意気揚々と取材に答える。
「長い年月の中で、鶏は
人間の食料と化してしまっています!
かつては地上を支配していた、鶏が、です!
私は、そんな鶏の現状を
許すことができないのです!」
「鶏が地上を支配していたなんて初めて
耳にしましたが、まあ今は置いておきましょう。
それで? 鶏の地位がどういう風に変われば、
あなた方は満足されるのでしょうか?」
「当然、望むのは食料じゃなくなることです!
私たちは食料じゃない、ひとつの命なのだと!
それを幻想郷中の人々に理解してもらい、
そして鶏を食べることをやめてもらう
それこそが、我々が求める――
鶏の地位向上の形なのです! コケー!」
「どこぞのヤツメウナギ屋の女将から
同じことを聞いた覚えがありますね。
食用の鳥というものは、
みんな同じ願いを抱くものなのでしょうか?」
文の取材態度は、落第点というにもほどがある。しかし、久侘歌は怒るどころか興味を示した。
「私と同じ使命を抱く
同志がいるというのですか!?
その話、もっと詳しく!」
「あやや。これではどっちが
取材されているか、分かりませんね……」
ドッグファイトのように激しく飛び回りながら、文は肩を竦めるのだった。