「しかし、せっかくの決起会。口約束を交わすだけ
では、いささか盛り上がりに欠けるというもの。
ここはひとつ、私とお姫様で
友情の杯を交わしてみるのはどうでしょう?」
「友情の杯? それって、普通に友達と一緒に
お酒を飲むのとは、どう違うの?」
「うーん、そうですねぇ……
言うなれば、兄弟杯のようなものでしょうか。
決して千切れぬ絆を誓い、互いの友情を祝って
杯を交わす……それが友情の杯です」
「へぇ……そんなのがあるんだ。なんだか
堅苦しいけど、そういうの、嫌いじゃないかも」
「そうでしょう、そうでしょう!
ではさっそく、私たち二人で杯を交わしましょう。
こういうこともあろうかと、
事前に準備は整えてあるのです」
言いながら、正邪は身体を大きく逸らす。後ろを針妙丸が覗くと、そこには酒瓶と二つの杯が。
正邪は杯に酒を注ぎ、その片方を針妙丸へと差し出す。まるで、本物の姫に献上するかのように。
「ささ、どうぞどうぞ……それに口をつければ、
私とお姫様の間には固い友情が結ばれます。
この幻想郷をひっくり返すそのときまで
決して切れることのない、固い固い友情が」
「ええ、分かったわ。あなたと私は今この瞬間から
友達よ。これからよろしくね、正邪」
二人は、友情を確かめ、その杯を交わし、運命共同体となることを誓った。
その誓いが偽りであり、遠くない未来に崩れ去ることなど、知る由もなく……。