冥界における亡霊の管理者――西行寺幽々子が住まう広大な屋敷、白玉楼。
その庭を管理するのは、幽々子の剣術指南役にして庭師を務める少女、魂魄妖夢の役割である。
妖夢の手によって整えられた白玉楼の庭は、まさに繊細優美。自然な美しさを引き出す、職人の業だ。
「我ながらいい出来ね。――さて、庭の手入れは
これくらいにして、鍛錬を始めようかしら」
流水のようにゆらりと切っ先が揺れ……刹那、稲妻のごとき踏み込みとともに、斬撃が空を両断した。
振り下ろしから逆袈裟ぎゃくけさへと流れるように斬撃を繋ぎ、かと思えばその身を捻っての払い斬りへ。
静と動の緩急をつけながら、まるで神に奉ずる剣舞でも舞っているかのように、白刃はくじんが踊る。
次の瞬間、一陣の風が吹き、桜の花びらがひらりと舞う。妖夢の刀は腰へと滑り、居合の構えへ。
しん――と、静まり返った庭で、妖夢は両の眼を閉じる。
妖夢は動かない。ただ、弾けんばかりの剣気が、帯電したかのようにその細い体に満ちていく。
思考は不要。どこまでも精神を研ぎ澄まし、自らを一振りの刃やいばとして完成させていく。
そうして、刃やいばと自己、彼我ひがの境界が取り払われた瞬間――一閃。
ほとばしった銀の閃光が、ひらり風に舞う花びらを捕らえ、喰らい、斬り裂いた。
「ふっ……妖怪が鍛えたこの楼観剣に、
斬れぬものなど、あんまりない!」
「今日も精が出るわね、妖夢」
「……って、幽々子様!? い、いつからそこに
いたんですか!? 言ってくださいよぉ!」
自らの剣の冴えに悦に入り、決め台詞まで口にしていた姿を見られてしまい、恥ずかしがる妖夢。
剣の腕は一流だが、いまいち締まらない。彼女もまだまだ、未熟者ということか。