心の底から楽しそうに下界の様子を眺める典に、主である龍は視線を向けていた。
菅牧典は管狐くだぎつね。自身がとりついた者にさまざまな助言をするが、最終的には破滅を与える存在だ。
そんな彼女が、本当に自分に利益をもたらしてくれるのか。
典を使役する側として、龍は深く思案してた。
(……利害は一致しているはずだ。
だが、私たちではあり方が違う。
どこで食い違いが発生するか……。
予想できない事象に邪魔されるのだけは、
なんとしてでも避けたいところだね)
天狗は情報と報道を売る。
情報が混乱した中で大きな騒ぎが幻想郷に起きれば、そこから利益を得ることは容易だ。
だが、典はどうだ?
利益を貪むさぼり、破滅を楽しむ彼女の利益は、龍にとっても利益となり得るのだろうか?
「どうされました?
もしかして……先行きが不安、だとか?」
「事がうまく運び過ぎていると
どうしても心配になってしまう性分でね。
時に、典。お前は今、何を一番に考えている?」
「それはもう当然、
飯綱丸様が得する展開を考えておりますとも。
私は管狐くだぎつねなのですから、主に利益をもたらすことが
生きる理由にございますので」
なんともわざとらしいセリフだが、その真偽を確かめるすべは、今の龍にはない。