「う……? なんだい? これは……
いったい何がどうなっているんだ……?」
聞き慣れない声に目を覚ましたナズーリン。
気づけば、ナズーリンの近くには、二足歩行をするたくさんのネズミたちがいた。
場所にも違和感がある。
一見、馴染みのある掘っ立て小屋のように見えるが、やけに建物が大きい。
ネズミたちは意気揚々とナズーリンを称える歌と踊りを披露し、崇め奉っている。
「な、なんだいこれは?
いつから私は君たちの王様になったんだ?」
尋ねるナズーリンに、ネズミたちは口をそろえて説明する。
いわく、ナズーリンは無縁塚に眠っていた財宝により財を築き、ネズミたちの王国を造ったという。
まったく身に覚えのないナズーリンはすぐさま否定しようとするが、
この王国に危機が迫っている、王様として助けてほしいと言われ、思わず言葉を飲み込んでしまう。
「……とりあえず、事情を聞かせてくれないか?」
しかし、ネズミたちが説明するよりも先に、建物が揺れ、天井に大穴が空いた。
上を見ると、帽子を被った巨大な生物が建物の中を覗き込んでいた。
帽子をかぶった巨大な狐と、葉っぱを乗せた巨大な狸。
夢としか思えない光景を前に、ナズーリンはあんぐりと口を開ける。
「今日から、このネズミの王国は
我々、狸組のシマじゃ!」
「いいや、この王国は狐組がもらう!
我々、狐組のシマじゃ!」
呆然とするナズーリンをよそに、狐と狸は威嚇し合う。
巨大な生物を相手に、ナズーリンたちになすすべなどない。
ひい、という悲鳴とともに逃げ出そうとするが、
二匹の獣が暴れ出し、ネズミの王国は呆気なく倒壊したのだった――。
「……はっ!? 夢……?」
目を覚ますナズーリン。そこにはいつもの掘っ立て小屋の風景が広がっていた。
「なんだ今のは……まさか、今のは夢、か……?
ああ、もう、なんという悪夢だろうか。
寝起き早々に最悪の気分だ」
ホッと胸をなで下ろしつつ、寝覚めの悪さにうめくナズーリンだったが……。
このあと、狐と狸の抗争に関わることになるとは、まだ知るよしもなかった。