これは、今も終わらぬ生きた物語。
「あーあ、途中までは
上手くいってたんだけどなぁ。
私の思い通りに、私の思うがままに
事を運べていたんだけどなあ。
……姫さえ邪魔しなければ、幻想郷は今ごろ、
弱者が笑って過ごせる
世界になっていたはずなんだけどなあ」
「私を騙していたくせに、よく言うわ!
嘘はいけないことだって
教えられたことはないの!?」
「ありませんね、ただの一度も。
嘘はいいこと、当たり前のことだって、
生まれてからずっと信じてきましたから」
小人の末裔から武器を向けられようとも、天邪鬼あまのじゃくの表情は変わらない。
他人を小馬鹿にする態度を崩すことなく、正邪は挑発するように舌を出す。
「私は天邪鬼あまのじゃくだ。嘘は私の存在意義。
心に正直、嘘も虚言も戯言も吐かないなんて、
そんなの天邪鬼あまのじゃくとは呼べませんよ」
かつて結ばれた同盟は、つい先ほど破綻した。天邪鬼あまのじゃく――鬼人正邪の裏切りによって。
「そもそも、勝手にだまされたのは
姫のほうでしょう?
天邪鬼あまのじゃくの言葉なんか信じるから悪いんだ。
私はすべてを否定し、すべてを拒み……
そして、すべてに仇あだなす
天邪鬼あまのじゃくなんだからよぉ」
「友達の言葉だもの、
信じるに決まってるじゃない!」
「偽りのお友達ごっこをしていただけですよ。
昔も今も、私と姫は他人です」
「そんなの、あなたが勝手に言っているだけだわ。
友達として、私には
あなたを反省させる義務がある!」
「それこそ姫が勝手に言っていることでしょう?
天邪鬼あまのじゃくとして、
私にはこの幻想郷をひっくり返す使命がある!」
言葉を交わしても意味はない。話し合いで解決できる段階は、とうの昔に過ぎている。
「言っても分からないなら、
身体に直接叩き込むしかないわね。
泣きながらごめんなさいするまで、
手加減なんかしないんだから!」
「打ち出の小槌を持っている姫の相手は、
ちと分が悪いですが……まぁ、いいでしょう。
かつての仲間と敵対するというこの美味しい局面、
楽しませてもらおうじゃあありませんか!」