きっかけは、ほんのささいな口喧嘩。 守矢神社主催のお祭り、その開催が翌日に迫り、打ち合わせをしていたときのことだった。   「ごめん、神奈子。ちゃんと聞き取れるように、
もう一度言ってくれる?」  
額にビキリと青筋を浮かべるのは、守矢神社に祀られる二柱が一柱、洩矢諏訪子。 諏訪子は可愛らしい帽子で目元を隠しながら、 今にも呪いを垂れ流してしまいそうなほど巨大な怒りを沸々とたぎらせる。
「ずいぶんと歳を取っているからね、 耳が遠くなっていても仕方がないわ。 言われた通り、もう一度言ってあげましょう。 ――あなたの提案、センスの欠片もないわよ」  
諏訪子を挑発するかのように言葉を返すのは、同じく守矢の二柱が一柱、八坂神奈子だ。 打ち合わせの進行を務めていた東風谷早苗がおろおろする中、二柱の神は火花を散らす。
「か、神奈子みたいな単細胞には
理解できなかったみたいだね。
これは守矢神社の信仰を集めるだけでなく、
参加者全員が楽しめる画期的な案だってのに」   「楽しめるのはあなただけでしょうが。 参加者はきっとドン引きすると思うわよ。 ああ、この祟り神は自分のことしか 考えていないんだな――ってね」
――瞬間。 諏訪子の中で、何かが爆発した。   「表に出なぁ、神奈子ぉ! あんたのその減らず口
二度と叩けなくしてやる!」   「いい度胸だ! 軍神に喧嘩を売ったら どうなるか、実力で分からせてやるわ!」  
こどものような口喧嘩が原因で、今ここに、守矢大戦が勃発した。