神々による弾幕ごっこは、もはや災害にも等しかった。
「これでもくらいなさい!
神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」ッッ!」
神奈子の周囲に展開された御柱おんばしらが、弾幕となって諏訪子に向かって飛来する。
対し、諏訪子は小柄な体躯を駆使し、隙間を縫うように無数の御柱おんばしらを回避。
標的を失った弾幕はそのまま大地へと突き刺さり、辺り一帯を大きく震わせた。
「相っっ変わらず力任せの弾幕だね!
繊細さの欠片もない!
弾幕っていうのは、こういうのを言うんだよ!
祟符「ミシャグジさま」ッ!」
小さな弾幕が交差しながら全方位に放たれるその光景は、
さながら卵から生まれたばかりのオタマジャクシをほうふつとさせる。
だが、神奈子はこれを難なく回避。余裕ぶっていた諏訪子は思わず握りこぶしを作ってしまう。
互いへの遠慮など一切見られない激しい弾幕ごっこに、幻想郷の天が大きく乱れる。
二人の喧嘩のきっかけは、ほんのささいな口喧嘩。
冷静になりさえすればわざわざ争うまでもない些事さじでしかない。
だが、弾幕を撃ち交わす二人は今、そんなことなどすでにどうでもよくなっていた。
「やっぱり私たちはこうでなくっちゃ!」
「その通り!
昔みたいに盛大にぶつかり合いましょう!」
惜しみなく力を発揮できる相手とのぶつかり合い。
長年共にしてきた神奈子と諏訪子からすれば、これもまたじゃれ合いのようなものだ。
祭に喧嘩はつきもの。
前夜祭とも言うべき過激な喧嘩は、二人が満足するまで続くのであった。