東風谷早苗、八坂神奈子、そして洩矢諏訪子とともに、守矢神社は幻想郷へとやってきた。 諏訪子は守矢神社に祀られる二柱の神がひとり。かつて祟り神たちを束ねていた土着神だ。 遥か昔に神奈子との戦いに敗れ、神社を彼女に乗っ取られた過去があるが、 今ではもう当たり前のように、早苗を含めた三人で仲良く日常を過ごしている。   「外の世界では寂れた神社だったのに、すっかり
どこにでもある一軒家みたいになっちゃったなぁ」  
守矢神社の屋根の上から境内を見下ろしながら、諏訪子はかつての神社に思いをはせる。 土着神として猛威を振るっていたころは、この神社は王城と呼ぶにふさわしい存在だった。 しかし、今はもう、その面影すら感じられない。 可愛い子孫。そして、かつての好敵手と暮らす家同然の神社こそが今の守矢神社のあるべき姿だ。
「あのときの私が今の守矢神社を見たら、
なんて言うかなぁ。
……きっと、驚きのあまり
目を丸くするんだろうね。
げこっ!? って驚くのかも」   くくくっ、と諏訪子は声を押し殺しながら、妄想上の、ありもしない自分を笑う。
「ま、死ぬ覚悟すら決めていた
あのときと比べたら、現状はそう悪くはないかな。
外の世界にいたときより信仰も集められているし
……うん。結果おーらいってやつだ」  
神としての扱いという点で言えば、ずいぶんと格が下がってしまったが、決して悪い気はしない。 あのころにはなく、今だからこそあるものが、この神社にはあるのだから――。