自身の存在を維持するだけの信仰を集めるには、外の世界は技術革新が進み過ぎた。
地震は神の怒りではなくなり、台風は原因が突き止められ、疫病には治療薬ができてしまった。
どれだけ神徳しんとくの高い神であろうが、今の世界では信仰を失い、そう遠くない未来に消えてしまう。
軍神である八坂神奈子もまた、消えゆく神のひとりであった。
「このままでは、我々は神としての自分を
保てなくなってしまう。
とにかく、信仰を集めなくては。
――たとえ、どれだけ無謀な手段を使ってでも」
そこで神奈子は考えた。同じ守矢神社に祀まつられている諏訪子とともに、たったひとつの打開策を。
それは、風祝かぜほうりの東風谷早苗や自分たちごと、守矢神社を幻想郷へ移転すること。
成功するかどうかもわからない、ある意味賭けでしかない選択だった。
しかし、このままなすすべもなくただ消える瞬間を待ち続けるぐらいなら、
賭けに出るほうがましだった。
――計画は無事に成功し、彼女たちは幻想郷へと舞い降りた。
神が当たり前のように存在し、昔と同じように――むしろ、昔よりも信仰を集めやすい理想郷。
ここならば、もう一度、神として君臨することができる。かつての自分を取り戻すことができる。
「やり直すための舞台は今、
この妖怪の山にて整った。
今こそ、計画を実行に移すときだ。
我々の手で、幻想郷中の信仰を
独占してやろうではないか」
結局、彼女たちの目論見もくろみは失敗したが、守矢神社自体は幻想郷に受け入れられた。
たかが一度の失敗ごときで彼女たちは諦めない。
再び信仰を集めるために地道な努力を続けているという。