ある日の朝。家の近くを散歩していた華扇に、雷獣がなにやら話しかけてきた。   「そうだったの……?
あの子もそんなことを考えてたりするのね……」  
話を聞くと、なんでも華扇の飼っている兎が、弾幕ごっこをしたがっているのだとか。 ペットの希望はなるべく尊重してあげたいが、力のない兎では弾幕ごっこなど夢のまた夢。 下手をすれば命に関わるかもしれない以上、そう簡単に許可を出すわけにもいかない。   「可哀想だけど、ただの兎じゃあ弾幕ごっこは
できないわ。ケガしちゃったら大変だもの」
とはいえ、可愛いペットのお願い。主人としては、どうにか叶えてやれないものかと思ってしまう。   「ううん……ちょっと待って。もしかして
これなら……試してみる価値はあるかもね」  
後日、華扇は妖怪の山で弱い妖怪を相手に弾幕ごっこを挑むことに。 そこで試したのは、雷獣や兎たちと練習してきた、『鳥獣戯画』をモチーフにした動物弾幕。   「さあ、いきなさい我がしもべたちよ!」
華扇の一声を受け、ペットたちは敵に向かって思い思いの攻撃を仕掛けていく。 強靭な鉤爪は敵を切り裂き、鋭い牙は敵を貫く。 ペットたちと協力して弾幕を放った結果……なんと、無事に勝利を収めることができた。 今後、霊夢を含む、幻想郷の強者相手に通用するかは分からないし、 この弾幕を使う保証などは一切ないが……とりあえず兎は満足げだ。   「ふふふ、喜んでくれたみたいで私も嬉しいわ。
これからは一緒に弾幕ごっこしましょうね」
飛び回る兎を見て、華扇は顔をほころばせる。 よく考えてみたら、兎は寂しがり屋の動物。 『弾幕ごっこ』に混じれず、華扇の力にもなれないことに、少し寂しさを覚えていたのかもしれない。 しかし、逆に言えばそれだけ自分のことを慕ってくれているということでもある。 その事実が分かっただけでも、華扇にとっては素晴らしいこと。 相手を大切に想う気持ちは、ちゃんと種族の壁を越えてくれる。 兎の様子を伝えてくれた雷獣にも感謝しておこうと、華扇は心にとどめるのだった。