妖怪の山、突き抜ける青空。今日も平和なはずの魔境にて、
射命丸文は後輩いびりに勤しんでいた。
「あやややや。天狗の里の守りを任された
あなたの実力は、この程度で大丈夫なんですか？
たかが弾幕ごっこで私にここまで後れを
取るだなんて、白狼天狗の名が泣きますよ！」
「いきなり弾幕ごっこをしかけてきておいて、
どうしてそう上から目線なんですか……。
そもそも、今は仕事中なので、
放っておいてほしいんですが……」
今日も今日とて妖怪の山の巡回を行っていた椛だったが、上司である文に見つかってしまった。
暇をちょうど持て余していた文は稽古と称して椛に弾幕勝負を仕掛け……そして今に至る。
「待てと言われて待つ敵はいません。平和な日々が
続いたせいで気が抜けているようですね。
やはりあなたは私が
鍛え上げなくてはならないようです」
「暇だからって部下にちょっかいかけるのは
やめてください。私たちは暇じゃないんです」
確かに、椛だって毎日真面目に仕事をしているわけではない。時にはサボリもする。
しかし、だからといってたかが気まぐれで仕事を邪魔されてはいい気もしない。
つまるところ、椛はこの身勝手な上司に辟易へきえきしている。
嫌な態度をとることすら許されない天狗の階級社会なんて滅んでしまえ、と思う始末だ。
「さあ、まだまだこれからですよ！
立派な防衛役になれるように、
稽古をつけてあげましょう！」
この勝負が終わったら文よりも偉い天狗に言いつけてやろう。
すさまじい速度で飛び交う弾幕を避けながら、椛は心に固く誓うのだった。