霊烏路空の平和で退屈な日常は、ついに終焉を迎えてしまった。
「あはははは! すごい! すごいよ、この力は!
こんなにすごい力があれば、
私はどんな妖怪にも負けたりしない!」
圧倒的な力は人々を盲目にし、あるべき姿を奪い去る。
山の神を名乗る女性から与えられたのは、神の火の力――八咫烏やたがらすと呼ばれる神鳥としての力だった。
分解の力を宿した左足、融合の力を宿した右足、そしてそれらを制御する右手の『第三の足』。
俗にいう核融合と呼ばれる究極のエネルギーを扱う力を、ただの地獄鴉であるはずの空は与えられた。
神をその身に宿すというのは、決して簡単なことではない。
並の人間、妖怪であれば、憑依に肉体と精神が耐えきれずに絶命してしまうこともある。
しかし、空は八咫烏の分霊をあっさり受け入れてしまった。
「なんて言ってたっけ。神降ろし? にも似た
状態らしいけど……よく分かんないや。
ま、なんでも燃やせるすごい力を手に入れたって
いうことだけは確かだし、いっか!」
その圧倒的火力と熱量は、その気になれば地上も地底も、
すべての場所を新たな灼熱地獄に書き換えることだって容易なほどの、究極の力だった。
「さあ、さとり様に喜んでもらうために、
まずは地上を侵略しちゃおう!
今の私なら、
鬼でも神様でもやっつけられちゃうもんね!」
地底に現れた人工太陽は、どんな侵入者も一瞬で溶かし尽くしてしまうだろう。