旧地獄にある巨大な屋敷。古明地さとりが主を務める地霊殿、その一室にて。
豪華な天蓋つきのベッドの上にさとりの姿はあった。
ネグリジェに身を包んだ彼女は、隣で横たわる大きな何かに身を委ねている。
黄金色こがねいろに輝く体毛。威圧感を放つ、立派なたてがみ。
獅子、ライオン。そんな名で呼ばれる百獣の王がなぜか、少女とともにベッドでくつろいでいる。
凶暴で知られる獅子に対して、さとりは一切恐怖する素振りを見せない。
それどころか、穏やかな笑顔を浮かべながら、たてがみをなでてさえいる。
「本当に、素敵な毛並みね……
触っているだけで、幸せな気持ちになれるわ……」
言いながら、喉を軽く撫でるさとりに、獅子は猫のようにごろごろと喉を鳴らす。
妖怪たちから恐れられているさとりに対して、獅子もまた、恐怖を抱いている様子はない。
獅子がさとりのペットとなってから幾星霜いくせいそう。一人と一匹は強い絆で結ばれていた。
「あなたに触れていると、余計なことを
考えずにすむわ。いつも、ありがとうね」
そこにあるのは、穏やかな、それでいて温かい空気。
誰にも邪魔されないその情景は、さとりがペットとともに過ごした、遠い日の思い出――。