「そろそろ、どこかで羽を伸ばした~い!」   毎日の激務に、ついに火焔猫燐は限界を迎えた。 尻尾と耳を逆立て、荷車を勢いよく投げ捨てる。死体の山が崩れたが、お構いなし。 すぐそばで空を眺めていたお燐の親友、霊烏路空はびくっと驚きながら、猫の鳴き声に反応する。  
「羽を伸ばしたい、って言ってもなぁ……明日も 仕事だから、そんなに遠くへは行けないよ?」
「ぐぬぬ……お空は意外と真面目だね。
でも、あたいは諦めないよ。
こういうこともあろうかと、簡単に羽を伸ばせる
絶好の休憩所を発見済みなのさ」   「へぇ、そんなところがあるんだ。 もしかして、地上の妖怪の山辺り?」
「ううん。ちゃんと地底にあるよ。 それも、地霊殿の近くに!
どうだい? 気になるだろう?」   「気になるけど……でも、いいのかな? まだ仕事が終わってないのに……」
「そんなの、明日のあたいたちが
なんとかしてくれるって!
今のあたいたちを甘やかさないと、明日の
あたいたちががんばれないかもしれないよ?」
だからほらほら、早く行こうよ、お空!
さとり様たちに見つかる前に!」
「お燐がそう言うなら……たまには、いいかもね」  
「そうこなくっちゃ!
さすがはあたいの親友だ!」  
そして、二人は仕事をほっぽりだし、自分たちを労いたわるために職場を後にした。 ここは地底、幻想郷一の温泉街。 そこにある労わりスポットと言えば……ある程度の予想はつくだろう。