「あぁ~……生き返る~……」   お燐がお空を連れてきたのは、地霊殿の近くに作られていた足湯だった。  
「こんなところに足湯があっただなんて。 私、全然知らなかったよ」  
「あたいも最近知ったんだよねー。
湯加減がちょうどよくて、気持ちいいでしょう?」
ふぅ、と日頃の疲れを吐き出すように、お燐はそれはもう大きなため息をこぼす。 すると、彼女のそばから、一匹の黒猫がひょこっと姿を現した。 地霊殿の近くだから、建物を抜け出し歩いてきたのかもしれない。   「そういえば、あたいたちも昔は
ただの動物みたいな見た目だったなぁ」   「え、そうだったっけ? あんまり覚えてないなぁ」
「さとり様にお風呂に入れて
もらったりしたじゃん。覚えてないの?」   「うん、全然覚えてない!」  
「あはは……なんだか、お空らしいや」   そんなあっけらかんとされてもなあ、などと思いつつ、燐はごろごろと喉を鳴らす。 湯気に当たって満足したのか、黒猫は二人のもとから離れていく。
「あぁ~……まだなでてないのに、 逃げちゃった……」  
「こらこら。猫ならここにもいるでしょう?
あたいをなでてもいいんだよ?」  
人魂たちが浮かぶ中、二人は楽しく会話を重ねていく。 親友との気ままなひと時を過ごすお燐の尻尾は、二本仲良く緩やかに揺れていた。