寒すぎない月夜の下。 幻想郷をさまよっていたエタニティラルバは、蛍の飛び交う地に迷い込んでいた。   「わぁ……キラキラしていて、とても綺麗ね……」   蝶ちょうの美しさとは一味違う、幻想的な美しさ。 夏の風物詩として数えられる蛍が作り出す絶景は、まさに古き良き日本をほうふつとさせる。   「今日は、ここで過ごそうかしら。
……月の光を、蛍の光が消してくれそうだから」
妖精には似合わない、ややもすると儚げな笑みとともに、ラルバはつぶやきを漏らす。 と、そんな彼女の存在に気づいたのか、蛍たちが光を灯したまま、彼女のほうへ近寄ってきた。   「私を歓迎してくれるの? ふふ、ありがとう」   「蛍たちがこんなに懐くなんて。 もしかして、君がエタニティラルバなの?」  
光の中から姿を現したのは、蛍の妖怪、リグル・ナイトバグ。 闇に蠢うごめく光の蟲むしとも呼ばれている彼女はマントをはためかせながら、ラルバの前に降り立った。
「こんばんは! そう、私がエタニティラルバよ!
そういうあなたは、だぁれ?」   「私はリグル、リグル・ナイトバグ。 この子たちのリーダーみたいなものよ。 こんなところに訪問者なんて珍しい、 ってみんなが騒ぐから、つい気になっちゃって」
「まぁ! 騒がせちゃってごめんなさい!
すごく綺麗だったから、つい……ね?
私も、あなたのことが気になるわ。 妖精と妖怪は似て非なるものだけれど、
私たちは同じ虫を司るもの!
似たもの同士、月夜を肴さかなに、
一緒におしゃべりでもどうかしら?」
「喜んで! 私も、あなたとはずっと お話ししたいと思っていたの!」  
「じゃあ、一緒に飛びましょう! せっかくの夜だもの。座ってお喋りだなんて、
もったいないわ! ほら、早く早く!」
「ご、強引だなぁ…… 妖精って、みんなこうなのかい?」  
「ふふっ! さぁて、どうかしら!」