「夏はどこだ―! さいきょーのあたいが、
幻想郷の夏に一番乗りしてやるぞー!」
巡りに巡る四季の一つ。もっとも太陽のまぶしい夏の季節。
自称さいきょー、氷の妖精・チルノは立夏の山を裸足で駆け回っていた。
「虫だって、草だって、川だって……
そこには必ず夏らしさがあるはず!
誰が相手だろうとあたいは負けない。絶対に、
あたいが一番最初に夏を見つけてみせるんだ」
彼女が急いでいるのは、誰よりも早く幻想郷の夏らしさを見つけるため。
それは『自称さいきょー』ゆえなのか、それとも純粋無垢な子供心ゆえなのかは分からない。
ただ、分かるのは、彼女は幻想郷の誰よりも、『一番』を重要視しているということだ。
チルノは頬を伝う汗を拭いながら、照りつける太陽を憎らしげに見上げる。
「それにしても、すっごく暑い……
あたいの自慢の翼が溶けちゃうよ!
この太陽はすごく夏っぽいけど、
こういうのを見つけたいんじゃない!
あたいが見つけたいのは、もっとこう……
一目で夏だと分かる、すっごいやつだ!」
夏にしか咲かない花だったり、夏にしか見られない生き物だったり。
自分が一番にこれを見つけたんだと、ほかのみんなに自慢できるような分かりやすさが大事なのだ。
「ここは幻想郷だもん。
きっと、すごいものが見つかるはず!
がんばるぞ、おー!」
幻想郷の山々に、元気いっぱいな妖精の声が響き渡る。
氷の妖精はエネルギー全開。夏の暑さなど、恐るるに足らず。