新たなる支配者であり、造形神でもある埴安神袿姫は、 疲労や病の存在しない命ある人形――埴輪を生み出し続けていた。   「近い将来、人間は不便な肉体を捨て、
病気にもならず、休息も必要ない……、
そんな究極の器を手にするため、
人間であることを捨てるかもしれないな」  
自分が作り出した、空っぽの埴輪に命を吹き込みながら、袿姫はつらつらと語る。
「生身の肉体など、所詮は欠陥品に過ぎないわ。
やはり時代は創造物。
頑丈さこそが正義なのよ。幻想郷の住人全員が
埴輪に魂を移す日が待ち遠しいわ」  
彼女は人間霊たちによって顕現させられた神様だ。 物騒な物言いをしているように聞こえるが、その心はあくまでも人間のため。 不完全な人間たちを完全な存在にしてあげたいと、彼女は心から思っている。 しかし、神の気遣いは高尚すぎるあまり、人間たちには理解されないもの。 袿姫もそれが分かっているからこそ、どうにかして人間たちに 自分の計画を受け入れてもらえないものかと日々頭を悩ませていたりするのだ。
「もっと可愛い埴輪にすれば、
みんな気に入ってくれるかしら?」   「作業しながら独り言を つぶやかないでください。怖いので」   「……まずは反抗期にならない
人形を作るべきかしらね」  
造形神が理想の世界を手にする日は、まだまだ遠そうだ。