魂魄妖夢の日常は、突如として現れたハニワによって粉々に砕かれてしまった。   「うぅ……幽々子様が
欲しい欲しいって駄々をこねるから、
例の工房でハニワを作ったのに……。
私の仕事は奪われるし、
幽々子様はあいつばっかり褒めるし……
どうしてこうなっちゃったの~!」
人々の仕事を代行するハニワによって居場所を奪われてしまった妖夢は、ついに家出を決行した。   「お腹すいた……せめて、何か食べてから
家出するべきだったな……。
幽々子様、ちゃんとご飯を食べているのかしら。
……って、い、今私は家出中なんだもの。
幽々子様のことなんて考えちゃダメ。 そうよ! それに料理ぐらい、
あのハニワが作ってるでしょうし!」
行く当てもない妖夢は路地に座り込み、お腹をすかせながら空を見上げる。 白玉楼にもう自分の居場所なんてないんだ、という想いがずしりとのしかかってくる中、 彼女をさらに追い込むように、通り雨が人間の里に降り注ぎ始めた。   「つめたっ! ……はぁ。まさか雨まで
降ってくるなんて。もう散々だ……」  
雨宿りをする気力すら湧かない妖夢は、服がぬれることも構わず、その場で膝を抱える。 と。 一瞬、人混みの中に、幽々子の姿を見かけた気がした。
(まさか、幽々子様……っ!?)   思わずぱっと笑顔を浮かべる妖夢だが、それが似た着物を着ただけの人違いだと気づくと、 顔をぐしゃぐしゃに歪ゆがめ、ぐす、と鼻をすすりながら再び膝を抱えた。 雨のせいで身体が冷え、思考も消極的になっていく。 白玉楼での楽しい日々が昔のことのように感じられ、ついため息がこぼれた。   「幽々子様……
私のこと、探しにきてくれないかな……」  
一筋の水滴が、彼女の頬を静かに伝った。