「――と、いう具合に、あのときの戦いは、
まさに歴史に残る一戦だったと思うのです!」
磨弓は鼻息を荒くしながら、かつての異変で妖夢と接敵した際の思い出話を語る。
埴輪らしからぬ激しい身振り手振りとともにつづられる武勇伝。
しかし、それを聞かされていた魂魄妖夢は、困ったように苦笑いを浮かべていた。
「そんな激戦だったかなあ……
やったのは、ただの弾幕勝負だったような……」
いくらオオカミ霊に取り憑かれていたとはいえ、心躍るような激戦を繰り広げていれば、
かっこいいもの好きな妖夢は少しぐらい覚えているはずなのだが、どうしても思い出せない。
(それにあの時、私じゃなくて
オオカミ霊が話してなかった?
弱肉強食こそ、畜生界の理ことわりだ!
とかなんとかいって)
なんにせよ、磨弓の中では、そんなかっこいい感じにまとまっているらしい。
彼女がそれで満足しているのだから、こちらから茶々を入れるのも忍びないだろう。
妖夢はとりあえず指摘を置いておくことにした。
「あのときは負けてしまいましたが、
次に戦えば勝つのは私です!」
「一度負けてるのにずいぶんと自信満々ね。
私だって負けないわよ」
「では、また手合わせをお願いします!
今度は負けませんので!」
「私でよければ、相手になるわ。
霊に取り憑かれていない、
全身全霊の私でお相手しましょう」
人間の里にも訪れるようになった磨弓と手合わせをする約束をした妖夢。
二人の仲は、そう悪いものでもなさそうだ。