平安時代より悠久の時を過ごしてきた少女、藤原妹紅。
対して、現代という刹那の時を生きる少女、宇佐見菫子。
ふたりの間には、千年以上もの年月の隔たりがある。
当然、同じ価値観は持っていない。いくら外見年齢が似ていようが、実年齢の差はあまりにも大きい。
まったく異なる時代を生き抜いてきたふたりの少女。
しかし、そんなふたりには、大きくも小さい共通点が存在した。
それは、ふたりがともに生まれつきの幻想郷出身の者ではなく、
外部からやってきた人間であることだ。
「妹紅さん! あいつ、まだ追いかけてきます!
このままじゃ追いつかれるかも!」
「ちぃっ、足の速いやつ。
走ってるだけじゃ逃げきれないか……!」
ふたりは現在、とある事情により、幻想郷の外の世界へやってきていた。
そして数多あまたの過程を超えた先で、強敵との出会いを果たしていた。
「え、ええっと、ちょっと待ってくださいね。
隠れられそうな場所を
スマホで探してみるので……」
「それにどれぐらいの時間がかかるんだ。
どうせすぐには終わらないんだろう!?
さすがに待ってられないな!」
懐から取り出したスマートフォンを慌ただしく扱う菫子に、妹紅は一喝。
そうしている間にも、妖怪との差は縮まっていくばかり。
業を煮やした妹紅は菫子をお姫様抱っこの要領で抱え上げ、その背に巨大な炎の翼を顕現けんげんさせる。
「飛ぶぞ! 暴れたら落ちるからな、
おとなしくしておいてくれよ!」
「そ、そんないきなり言われても、
心の準備が――あああああああああああああ!」
炎の鳥が大地を蹴り、人工の明かりに照らされた夜空へと飛翔した。