「ちぃっ、まだ追いかけてくるか……このままだと
追いつかれかねない……どうする……?」
「せ、世界が回る~ ぶくぶくぶく……」
「こいつ、確か空も飛べたよな……
まあ、気絶してるなら好都合だ。
速度を上げるぞ!」
炎の翼の出力を上げ、妹紅はさらに大ジャンプ。
激しい空気抵抗が突風を生み、気絶していた菫子も強制的に覚醒させられた。
「――わっ、わっ!? こ、ここはどこ、
私は宇佐見菫子!」
「ようやくお目覚めか眠り姫。
不死鳥フェニックスの乗り心地はいかがかな?」
「乗り心地はいいけど、気分はサイアク、かな……
それで、敵はもう撒まいたの?」
「いーや、すぐ後ろについてきてる。
こいつ、まさか幻想郷産の妖怪か? タフだねえ」
「どうしてそこで嬉しそうな顔をするのか
私には分からないんですけども!
うーん、どうしよう。
このまま逃げてても埒らちが明かないよね。
あの子がこっちでこれ以上悪さする前に、
退治してあげないとだし」
「実力行使か。うん、やっぱりそれが
一番手っ取り早いな。何より刺激的だ」
妹紅は空中でくるりと翻り、追ってきていた妖怪と相対した。
「妹紅さん、そういうの好きそうだもんね」
「お前も好きなクチだろう?
新しい刺激を求める若人なんだから」
「まあね。刺激と都市伝説は私の大好物だもの!」
永遠の時間を生きる藤原妹紅と、現代の時間を生きる宇佐見菫子。
正反対のようで根底のところでは似通っているふたりは、新しい刺激を求めて今日も生きる。
外の世界での妖怪退治。
もしかしたら、こうなる世界も――少なくとも、菫子が望んだ未来みたかったユメは、こうだったのかもしれない。