「ついに私は最強となった。これでもう、
誰もがみんな、私を見上げることしかできない!」  
七つのオカルトボールを周囲に浮かべながら、 宇佐見菫子はビルの間をすり抜けるように飛んでいた。 苦労のかいあり、ついに集まったオカルトボール。その力を解放したときの、絶対的な力と高揚感。 幻想郷の妖怪たちに散々追われて追い詰められたとはいえ、オカルトボールを使えばこの通り。 もう、彼女はただの人間ではない。幻想郷の誰もが敵わない、最強の存在となったのだ。
「今の私なら、幻想郷の結界を
壊すことだってできるでしょうね。
命を落とすかもしれないけれど、それもまた一興。
偉業を果たし、美しい最期を遂げましょう!」  
外の世界の天才は、安寧あんねいに包まれた古き平和を崩すべく、その力を行使する――。
「…………なーんて、はちゃめちゃに
立ち回ってたときもあったわねぇ」  
家に飾っている水晶玉を眺めながら、菫子はあのときの自分を懐かしむ。 幻想郷の結界を壊そうとしていた彼女だが、今ではすっかり幻想郷にもなじみつつある。   「さ、今日も早く寝なくっちゃ。
寝ないと幻想郷に行けないなんて、不便よねぇ」
幻想の世界に行けることは、なんだかんだで楽しいし、ちょっと……いや、かなり嬉しい。 現実の世界よりもずっとずっと面白いから。 あのとき、結界を壊して死を遂げていたら、きっとこんな経験はできなかったことだろう。   「じゃ、いってきまーす」   水晶玉に軽く声をかけてから、菫子は眠りにつく。 今日もまた、遠い遠い幻想郷へと旅立つために――。