長い年月を経て道具などに魂が宿ったとされる付喪神。 九十九弁々九十九八橋。 九十九姉妹と呼ばれる彼女たちも、そんな妖怪のうちの二名である。   「今日はここでライブを開きましょう」  
「夜のお寺かー…… ライブって雰囲気の場所じゃないようなー? 強いていうなら、肝試しのほうが合っているかも」
「人気ひとけがないなら、
私たち妖怪にとって最高の演奏会場だと思わない?
それに、雰囲気がないなら
私たちで作ってしまえばいいのよ。
音楽って、そういうものでしょう?」  
「むむむ。その『自分は音楽を理解していますよ』 みたいな言い方は癇かんに障るけど、 姉さんの意見には大賛成だから、許してあげる!」
「はいはい。いいから早く準備をしましょう。 そうね……お寺全体に
音色が響き渡りそうな場所はないかしら?」   「それはもちろん、境内のど真ん中でしょー! 誰もいないから邪魔にもならない。 山門の向こうからは音色を聴きつけた お客様がやってくる。まさに絶好のポジション!」
「ふふっ、八橋にしてはいい案ね」   準備は整った。あとは、思いのままに旋律を響かせるだけ。   「好き勝手に弾くけれど、
ちゃんと合わせてちょうだい」   「そっちこそ! 置いてかれないように気をつけてよー!」