琵琶びわと琴こと。
日本を代表するふたつの和楽器が奏でる旋律は、とても静かな――否いな。
静けさなんて欠片かけらもない。あるのは躍動。人の心を震わせる、アップテンポの旋律だ。
「まだまだ足りないわ。
もっと激しく、もっと強く!
どこぞの騒霊バンドに
負けないぐらいの演奏を、私たちの手で!」
「琴がおとなしいなんて誰が決めたのー?
私たちは私たちだけの音色を!
さあ、聞いて感じて、そして震えて!
九十九姉妹の心揺るがす演奏を!」
美しく響くその琵琶びわと琴ことの音色は、聴く者の魂を大いに鼓舞した。
それは決して生き物だけに限らない。
彼女たちの演奏を聞いた数多あまたの魂宿りし道具つくもがみたちが、次から次へと集まってくる。
気づいたときには九十九姉妹を中心に、小さな宴の準備が整っていた。
「あら、お客さんたちでいっぱいね。
これは、期待に応えてあげないといけないわ」
「わっほーい! じゃあじゃあ、みんなで
盛り上がれるような曲を弾いてあげようよー!
夜のお寺で大合唱……
いや、大演奏会の始まりだー!」
やいのやいの、よってらっしゃいみてらっしゃい。
世にも不思議な道具の演舞、はじまりはじまり。