「何もかも逆さまな下克上げこくじょうのこの世界。
最強の道具が誰なのか、今ここで決めるわよ!」  
伝統楽器・琵琶びわの付喪神である弁々は、光の弦のついた琵琶を携え、素手で激しくかき鳴らす。 彼女は妹ともども、もともとはただの楽器だった。 しかし、打ち出の小槌の魔力による異変によって、 ほかの多くの道具たちとともに、彼女たちもまた、付喪神となったのだ。 自由を手に入れた弁々は、小槌の魔力の効果により、人間たちへの逆襲を開始した。   「私たちの目的は、道具による世界征服!
人間が道具を支配する時代は、今日で終わりよ!」
道具たちが自由に動き、その能力を遺憾いかんなく発揮できる道具のための世界。 それを実現させるため、彼女は妹とともに、魔力の源がある輝針城へと向かっていたのだが――。   「ちょっと! 博麗の巫女が
こんなに強いなんて聞いてないわよー!」  
付喪神として目覚めたばかりの彼女たちでは、正義の味方に勝てるわけもなく。 あっさり負けた彼女たちは異変が終わると、 ほかの妖怪たちと同様に、幻想郷の日常の一部として受け入れられることとなる。
「やっぱり、人間がいないと
道具は道具として成り立たないもの。
一方的に恨むなんて、
お門違いだったのかもしれないわ」  
博麗の巫女にとっちめられて、すっかり牙の抜けてしまった九十九弁々。 最近では、妹とともに人間の里でゲリラライブをする姿が目撃されるとか、されないとか。