「お前を呼び出したのは、ほかでもない。
そろそろ白黒つけようと思ってな」
「……そんなことだろうとは思いました」
「なんだその顔は。
嬉しすぎて今にも泣きそうなのか?」
「あまりにも予想通りの理由すぎて
あきれているんです。見て分かりませんか?」
「相手の心なんて読めないからな。
見ての通り、私はサトリ妖怪じゃあない」
「洞察力がないだけでしょう……もう少し、
考えてからものを言ってほしいものです」
求めたところで無駄だろうが、と八千慧は髑髏どくろの上で肩をすくめる。
「返答を聞きたいなあ。
どうだ、私からの決闘を受けてくれるのか?」
「……我々はそれぞれ組織のトップ。
個人の感情で組の未来を左右するような真似を
するなんて、ちゃんちゃらおかしいでしょう」
「そういう堅苦しい理屈は聞きたくない。
私たちはどちらも道を外れた極道者。
はぐれ者同士、拳で語り合おうじゃあないか」
「……理解できる脳がないのだから
言っても無駄でしたね、分かりました。
私が無策で来たとは、思わないことですね」
無機質に転がる髑髏どくろだけが、二体の獣けものを静かに見つめていた。