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――『西行妖』の下に、何者かが封印されている。
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永遠亭の書架、そこにあった古い記録の中から、
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幽々子は西行妖の秘密を知ることとなってしまった。
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「わざわざこんなにも大がかりに
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封印されているんだもの。
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さぞや高名な御人の死体が埋まって
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いるのでしょう。一目、この目で見てみたいわ」
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呪いのせいか、埋まっている死体のせいか、西行妖は春になっても決して満開になることはない。
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それならば、逆に満開になれば封印が解けるのではないか――幽々子はそう、考えた。
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「幻想郷中の春を集めましょう。
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西行妖が満開になるだけの、春をいっぱいに」
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小間使いの妖夢に幻想郷中の春を集めさせ、冥界の西行妖に取り込ませる。
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たったそれだけの、簡単な計画のはずだった。
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しかし、この計画には代償があった。
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春を奪われた幻想郷は、永遠の冬を与えられた。
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長い長い寒さに凍えることになった幻想郷の人々は、春を取り戻すために立ち上がった。
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「ふふっ。どんどん春が集まっていくわ。
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西行妖もそろそろ満開になりそう。
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ああっ、早く封印が解けないかしら。
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埋まっている御人に早くご挨拶をしたいものだわ」
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好奇心から始まった計画が、いつの間にか『異変』と呼ばれるようになる中、
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幽々子は無邪気に未来のことへ想いをはせる。
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だが、彼女は知らなかった。
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西行妖の封印を解くこと。それすなわち――自身の死を意味するということを。
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