吸血鬼として生まれて四百九十五年、気の触れた少女フランドール。 周囲に大きな被害を出すことを恐れられ、表に出ることは許されず。 そもそも、彼女自身も自ら外に出ようなどとは一切思ってもいなかったりする。 ずっと地下に引きこもっているが、食事にすら困らないのだから、外に出る理由もない。   「今日はどんな食べ物を
持ってきてくれるのかしら。
ああ、お腹がすいたわ」
通常、吸血鬼は食事のために人間を殺さない程度に襲うが、 彼女の場合は与えられたものしか今まで食べたことがない。 そのため、人間を襲おうにも襲い方を知らず、 手加減ができないので一滴の血も残さず吹き飛ばしてしまうのだ。   「あら。ようやく来てくれたのね。
私もう、お腹ペコペコで。待ちきれないわ。
このままだと、あなたのことを食べてしまいそう」   フランドールの冗談か本気か分からないセリフに、食事を運んできた従者は苦笑を浮かべる。
「え? 今日は食事以外のものも
持ってきてくれたの?
何かしら……もしかして、人間? やったっ。
人間は好きよ、派手にはじけてくれるもの」  
彼女の前に人間が現れようものなら、 それは吸血鬼にとっての「食べ物」ではなく、暇をつぶすための「おもちゃ」にしかならない。   「今日はあなたが一緒に遊んでくれるのね。
ほかの人みたいに、簡単に壊れないでね」