キュッとして、ドカーン。
紅い館の地下室が、真っ赤に、真っ赤に染まっていく。
「あーあ、壊れちゃった。
もう少しがんばってくれないと、つまんなーい」
手に付着した赤い液体をなめながら、
フランドールはつまらなそうに口をとがらせた。
地下に何百年も閉じ込められてきた彼女に、人並みの倫理観も常識も存在しない。
あるのは純粋な本能だけ。やりたいことをやりたいように。気遣いなど二の次だ。
「遊んだらお腹がすいちゃった。
もっと前にもお腹がすいていたんだっけ。
うーん、まあ、過ぎたことなんてどうでもいいわ。
今、私はお腹がすいているんだから」
従者が運んできてくれた料理に手を付け、口元を汚していくフランドール。
姉はテーブルマナーに煩うるさいが、引きこもり続けてきた彼女はそんなことどうでも良いと思っている。
ただ、食欲の赴くままに。顔や服が汚れることなど構わない。
「ごちそうさまでした。
お腹いっぱいになったら眠くなっちゃった。
お皿は下げておいてちょうだい。お願いね、美鈴」
フランドールのお願いを、従者は断ることすらできない。
強大すぎる力を持って生まれた彼女に反抗できるのは、それこそ実姉ぐらいのものである。
「ああ、今日は楽しい夢が見られるかしら。
お姉さまたちと
楽しくティータイムをしたりとか。
そんな、すてきな夢が……」