他者からの評価というものは、誰だってどうしても気になってしまうものだ。
人間であろうと妖怪であろうと、心を持っている者であれば誰しもが抗あらがえない宿命と言える。
当然、畜生界で暮らす動物霊たちもまた、例外ではない。
実力主義の弱肉強食社会。力ある者が高みにのぼり、力なき者はねじ伏せられる。
――だが、そんな畜生界にも、絶対的な精神性を持つ、無敵の妖怪が存在する。
「勁牙組けいがぐみは獣らしい獣の集団で、
力しか取り柄のない筋肉馬鹿ばか組織だあ?
勁牙組けいがぐみなんてただ暴力が好きなだけの、
その名の通りの暴力団でしかないだあ?
生き方になんの誇りも持っていない、
ただ暴れたいだけ……ハッ。
好き勝手言ってくれるねえ」
赤みがかった茶色い帽子の下で瞳をぎらつかせながら、
漆黒の天馬てんまはドスの利いた声を轟とどろかせる。
「だからどうした? それがどうした?
勝手に言っていればいい。
……だが、言ったからには
どうなっても文句は言わせない。
手を出したのはそっちが先だ。牙を剥むいたのなら、
剥き返される覚悟があるってことだよなあ?」
他者の戯言ざれごとを軽く流し、そして宣戦布告するのは、勁牙組けいがぐみの組長である驪駒早鬼。
畜生界の派閥の中でも野蛮だと言われる彼女たちの組織だが、
突き抜けた真っ直ぐな姿勢やその強靭きょうじんな肉体は本物だ。
「さあ、お前ら。準備をしろ。
看板に泥を塗られた。落とし前をつけにいくぞ」