驪駒早鬼を怒らせたらどうなるか。――その答えは至ってシンプル。 自分の行動の愚かさを、自分の軽率さを、その身をもって思い知らされるだけだ。   「私を馬鹿ばかにするのは構わん。 だが、部下を馬鹿ばかにされちゃあ
黙ってはいられないなあ!」  
早鬼は考えることが苦手だ。 思考回路は基本的に単純で、だいたいの事態をなんとかなるだろで済ませるような妖怪だ。 だが、持ち前の実力、そして統率力と実績が、彼女の単純さを強力な武器へと進化させる。
「今さら謝ったって許しはしない。お前たちは
勁牙組けいがぐみを愚弄したんだ。ケジメはつけてもらう」  
やりすぎだ、もっと平和的解決を――そんな声をぶつけられるのは日常茶飯事。 しかし、彼女たち勁牙組けいがぐみは止まらない。剥いた牙を引っ込めるわけにはいかない。   「薬にも毒にもならない風評なんて
気にしても、無駄だ。
誰になんと言われようともやりたいようにやる
――それが私たち、勁牙組けいがぐみだろうが」
彼女のシンプルな思考回路は、部下たちに自由と自信を与える。 難しいことを考えないからこそのカリスマが、勁牙組けいがぐみという組織を支えているのだ。   「本能のままに、今日も大いに暴れてやろう。 勁牙組けいがぐみがどれだけ恐ろしく、
どれだけ強大な組織なのかを
知らしめてやるために!」  
さあ、今日も彼女ら畜生たちは幻想郷にて大いに暴れ回る。 血肉を求める獣のように、嵐のように、炸薬さくやくのように、ただ野蛮に。