モノというのは必ず、何者からか生み出される。 世界や人間もまた同様。これらはかつて神々から生み出されたものであるからだ。 そして、人間たちもまた、文明を繁栄させるため、世界中にさまざまなモノを生み出した。 だが、この世界に生み出された、創造されたモノは、 世界の繁栄や生活において、重要なモノばかりとは言いがたい。 重要でないモノ。 例えるなら、人の心を満たすためだけに存在するもの――そう、嗜好品しこうひんや芸術品などだ。   「うーん。さすがは私ね。
なんとも素晴らしい造形だわ」
自分の作った芸術品を自画自賛しつつ、埴安神袿姫は巨大な筆で肩を叩く。 彼女が作るのは埴輪だけではない。気分によっては絵を描いたり、ほかのモノを作ることだってある。 そんな彼女のアトリエには、多種多様な芸術品が所狭しと並べられている。   「価値を問われたらなんて答えてあげましょうか。
私が作りたいから作った。
この子たちは、私のために存在している。
うん、これがばっちりね」  
世界の繁栄にも、文明の進展にも――なんの役にも立たないモノたちが、そこには存在している。
「さぁーって、次はどんなモノを作ろうかしら? ふふっ。筆が止まらない、
私の芸術は留とどまるところを知らない。
だって、私の頭の中には、実現したいアイディアが
まだまだいっぱいあるんだから!」  
心の底から楽しそうに、袿姫は自由気ままに思うままに筆を進めるのであった。