畜生界の巨大組織の一つ、勁牙組けいがぐみは弱肉強食を体現したかのような組織である。 強靭きょうじんな肉体と純粋な実力主義が軸として掲げられ、 力さえあればどんな者でも幹部にのし上がれるところから、畜生界最強の組織とも言われている。 そんな勁牙組けいがぐみのトップに君臨しているのは、驪駒早鬼という妖怪の少女。 考えるよりも行動することに重きを置く彼女は、まさに勁牙組けいがぐみを体現したかのような存在だ。   「ふっふっふ。好戦的で気持ちのいいやつと
相対するのは心地いい。
吉弔みたいないけ好かないやつを相手に
していると、むしゃくしゃして仕方がないからな」
彼女は相手を過小評価しない。 実力主義の中で生きてきた早鬼は、相手と真っ向から向き合い、そして純粋な評価を下す。   「いいだろう。
気に入ったついでに特別サービスだ。
この漆黒の天馬てんまの実力を、
余すことなく見せつけてやろうじゃあないか!」
力任せに暴れることが大好きな部下たちをまとめ上げていることもあってか、 彼女自身もまた、すべてを暴力で解決しようとする傾向がある。 だが、早鬼はそんな自分を悪いなどとは思わないし、改善しようとも思っていない。 なぜなら、自分たちは畜生だから。 畜生は畜生らしく、実力勝負で白黒つけるべき――それが、彼女の信念なのだった。