喧騒けんそうと花火の音が鳴り響く博麗神社。 その縁日には人も妖怪も関係なく、多くの者が足を運んでいた。 屋台を切り盛りして忙しい者、屋台を端から端まで堪能たんのうする者。 宴うたげの中で親しき者とあいさつを交わす者だったり、 仇敵きゅうてきと火花を散らす者すらも見受けられる。 短い夏の夜に包まれた空間には、たくさんの出会いと交流が存在していた。
「普通の縁日のはずなのに、 どうしてこんなにも退屈しないのかしら」  
「幻想郷は常に変化するもの。何十年、何百年
生きようとも、同じ光景を見ることはできないわ」
そんな、賑にぎやかな縁日の一画で、意味深な会話が繰り広げられていた。 会話の主ぬしは、縁日にいる人間、妖怪たちの中でも一際目立つ美しい二人の少女。 ひとりは、誰よりも幻想郷を愛するスキマの賢者――八雲紫。 そして隣にいるのは、白玉楼に住む亡霊の姫で、紫の親友でもある西行寺幽々子だ。  
「変わり続けるものをずっと 見ていられるのはとても楽しいの。 私は亡霊でしょう? 変化とは程遠いもの」
「姿かたちが変わらなくとも、
変化することはできるはずよ?
なぜなら、ここは固有の
時の流れを手にした幻想郷せかい
どんな変化であれ、そのすべてを受け入れるのが、
私たちが作り出した世界なのだから」
「屁理屈だとしても、その言葉だけは ありがたく受け取っておくわね」  
古くからの付き合いだからこその軽口に、二人は花を咲かせていく――。