「そういえば、今日は妖夢と一緒に来ているの。 だけれど、すっかりはぐれてしまったわ」  
「お祭りが楽しすぎるあまり、
周りが見えなくなったのでしょう」
「お祭りを楽しむみんなを見ていると、 童心を思い出しそうになるわ。 ――まあ、昔のことなんて、 何も覚えていないのだけれど」
「記憶の有無なんて些細ささいな問題よ。 そもそも、童心なんて
誰かに決められるものではない。
亡霊になろうが、賢者になろうが、
今この瞬間を全力で楽しむ……
それだけが重要なのではなくて?」
「あらあら、一本取られちゃったかしら。 こういうときって、何か奢おごってあげるべき?」  
「それじゃあ、あなたの時間をもらいましょうか。 私が満足するまでの間、
話し相手になってもらいます」
「まあ、なんて恐ろしい妖怪なのかしら。 あなたの話を聞いていたら、 それこそお祭りが終わってしまうわ」  
くすくすと楽しそうに笑い、二人はその肩を寄せ合う。 ――数秒たって。夏の夜空に、大輪の花が咲いた。  
「今年の花火は一際輝いて見えるわ。 弾幕もいいけど、たまには こういうのも悪くはないわね」
「来年はさらに素敵に見えることでしょう。
……ちゃんと予定、空けておきなさいね」   「幻想郷を作った賢者様からのお誘いとあっては、 断るわけにはいかないわぁ」  
花火を見上げながら、二人は微笑ほほえむ。 今日の二人の姿は幻想郷の猛者などでは決してなく、 幻想郷のひと夏を過ごす、普通の少女たちにしか見えなかった。