「はぁ……分かりました。では、いつも通り、
口裏はこちらで合わせておきます」
「あら? そんなことする必要はないわ。
だって、あなたも一緒に来るんだもの、衣玖」
「……えー。総領娘そうりょうむすめ様の遊びに
付き合おうとすると、
身体からだがいくつあっても足りないのですが」
「そこはほら、衣玖だから
ついてこられるっていうことで。
いくら暇つぶしが多いからといっても、
ひとりだとつまらないでしょう?
だからあなたを私の仲間に入れてあげるの。
それに……お目付役が私から離れるのは、
お役目としてどうなんだろうねえ?」
「総領娘様が素直で正直な天人として育って
くれて、私は嬉しいですよ。心労が絶えません」
「本音を隠さずに言ってくれる衣玖の
そういうところ、私は嫌いじゃないわ」
衣玖がどれだけ嫌がろうとも、天子の決定を覆すことなどできはしない。
だから、彼女のこれはあくまでも茶番。止めはしましたよ、という予防線でしかない。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。私の
私による私のためだけの暇つぶしをしに……ね」
「なるべくモノを壊さないようにお願いします。
怒られるのは私なんですから」
一陣の風とともに、竜宮の使いは天人を引き連れ、地上へと降り立つのだった――。