豊聡耳神子が起こした異変は、多くの者を巻き込んだ。 当然、異変解決を生業なりわいとする博麗の巫女みこには目をつけられ、 同じく異変が起きればやってくる普通の魔法使いからも倒すべき敵と認識された。 しかし。正義の味方が立ち上がったからといって、そう簡単に黒幕のもとへはたどり着けない。 なぜなら、豊聡耳神子には、信頼の置ける配下たちが存在するのだから。   「まったく……おとなしく事の成り行きを
見守ってくれていればよいのにな」   「そう簡単にはいかないだろう。私たちはこれでも 騒ぎを起こした側の存在なんだから」
神子みこが眠る神霊廟しんれいびょうの護衛につくのは、同じ豪族出身である二人の少女。 風水を自在に操る尸解仙しかいせん――物部布都。 そしてもうひとりは、尸解仙しかいせんになれなかった亡霊――蘇我屠自古である。   「まあ、よい。太子様の眠りを妨げる者は
何人たりとも通すわけにはいかん。
青娥殿には期待できぬし、
我々が太子様をお守りするほかはあるまい」
「やる気を出すのはいいが、 あまり足を引っ張るなよ」  
「それはこっちの台詞せりふであろう」   軽口をたたき合う二人。そんな彼女たちのもとに、ついに侵入者が現れた――。