「弾幕を交わさずとも分かるぞ。中々の強者だ。
少々、手こずるかもしれん」   「ああ。だが、ここで尻尾を巻いて 逃げてしまっては、あの御方に合わせる顔がない。 私たちの手で丁重におもてなしして、 涙とともにお帰りいただくほかはないだろうな」
侵入者に向けて、殺気を向ける布都屠自古。 しかし、相手は逃げるどころか逆に殺気を向け返してきた。   「どうやらとっくに覚悟を決めているらしい。
ううむ、この地には豪胆な者しかおらんのか?」   「豪族の威圧感に臆することなく 真正面から向き合ってくる、 その精神性は天晴あっぱれだな」
きっと、勝ち目はないのだろう。相手との力量差を見極められないほど、二人は愚かではない。 ――だからどうしたというのか。 大切な主あるじを守るためなら、多少の劣勢など覆せなくてどうする。   「太子様から任されたのだ。
やれるだけのことをやってみせようぞ!」   「その通りだ。豪族の誇りと実力を、 思い知らせてやらないと太子様に顔向けできん」  
二人は視線を交わし、そして不敵な笑みを向け合った。
「屠自古よ。今回だけは手を取り合って
事に当たらねば、太子様を守りきれんぞ」   「任せておけ。護衛を任された以上、 全力で……やってやんよ!」  
ここは絶対に通さない。 同じ「道」を選んだ者として、ともに不老不死の身体を得るため。 人ならざる者として生まれ変わった二人の豪族は、主あるじを守るべく、弾幕を展開した――。