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気を使う程度の能力を持ち、さらに武術の心得もある、紅魔館最強の門番――紅美鈴。
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その守りは虫一匹通さぬほどに強固であり、外敵の侵入を許すことは本当にたまにしかない。
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そんな輝かしい戦績を誇る美鈴。
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しかし、彼女は今、窮地に立たされていた。
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「あっづい……咲夜さんから頼まれたとはいえ、
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何の対策もなしにこの暑さの中で作業するのは、
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さすがに無謀でしたかね……」
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限界まで鍛え上げられた彼女の肉体であっても耐えることができない、あまりにも強大な敵。
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夏の暑さという最強の敵を前に、彼女は白旗を上げざるを得なかった。
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「あー……頭がくらくらしてきました……
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もう無理です、限界です」
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彼女が紅魔館のメイド長から頼まれたのは、庭園の手入れという単純な肉体労働。
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身体を動かすことが得意な美鈴は二つ返事で承諾したのだが、
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炎天下での作業がここまでつらいとは、さすがに予想できなかったのである。
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もはや立っていることすら叶わず、崩れるように木陰へと腰を下ろす美鈴。
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「こりゃ、お嬢様たちが外に出たら
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一瞬で灰になっちゃうかもしれませんねえ……」
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軽口をたたきながら、メイド長が用意してくれていた箱をゆっくりと開ける美鈴。
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ぶわっと噴き出す冷気にひるむことなく、彼女が中から取り出したのは一本の氷菓子。
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「まぁ、こんなに美味しいものが味わえるなら、
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たまには負けるのも悪くないですね」
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盛夏に敗績した彼女は、諦観した様子で手にした氷菓子を口へと運び、
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――幸せそうにその頬を緩めるのであった。
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END,