今ではもう幻想郷でもお馴染なじみの、守矢神社の風祝かぜはふりこと東風谷早苗。
外の世界からやってきた存在ではあるものの、すっかり幻想郷の住人として受け入れられていた。
「せっかくの夏なのに、
何もしないなんてもったいない!
夏はイベントが盛りだくさんなんですよ!?」
幻想郷に染まってきたとはいえ、もともとは外の世界で暮らしていた少女。
本質そのものが変わるわけではない。事実、彼女は夏をどう楽しむかで頭を悩ませていた。
「夏といえば海……ですが、幻想郷に
海はありません。ううむ、どうしたものか……」
腕を組んで頭をひねって、ぽくぽくぽく……。
頭に流れる効果音は彼女の宗派それと違う気がするが、おかげで早苗は画期的なアイディアを思いつく。
「思いつきました! そうです。
海がなくても、守矢神社には湖があるじゃない!
巨大な湖で水着を着て遊べば、
それはもう海で遊ぶのと変わらないはず!」
そうと決まればなんとやら。
可愛い水着に着替え、その上にパーカーを羽織った早苗は手を伸ばす。
「さあ、神奈子様、諏訪子様!
早く行きましょう!
守矢の夏はこれから始まるのです!」
イベントをひとりで楽しむなんてもったいない。家族全員で参加するほうが楽しいに決まっている。
あまり乗り気ではない二柱ふたはしらの神様たちを半ば強引に引きずりながら、早苗は湖目指して一直線。
「暑さのせいで外に出ない人々も多いですが、
これはある意味ビジネスチャンス。
湖をレジャー施設として開放すれば、
あわよくば信仰集めに繋つなげられるはずです!」
商魂たくましい現人神あらひとがみの姿に、神々は思わず呆あきれ顔を浮かべるのであった。