「この広さなら海の代わりとしても
問題ありません。
ただ湖を解放するだけでも多くの人に楽しんで
もらえますけど、それだけじゃつまらない!
やるなら徹底的に、楽しい
レジャー施設として生まれ変わらせなければ!」
うおおおお、と水着姿で盛り上がる早苗。 彼女の頭の中では信仰を集めるための計画が、今まさに練り上げられようとしていた。 ――が、そこで、守矢の神々からストップが入ってしまった。  
「夏をチャンスに変えようとする姿勢はいいが、 まずは自分が楽しむべきなのではないか?」   「そうそう。せっかく三人で泳ぎに来たんだしー」
「たしかに……私としたことが、
当初の目的を忘れてしまっていました。
お二人と過ごす夏こそが、
何物にも代えがたい宝物。
東風谷早苗、夏を楽しもうと思います!」   信仰集めはいつでもできる。だが、三人で過ごす夏は二度と取り返すことはできない。 説得に応じた早苗は頭の中の計画を放り投げ、笑顔のままに湖に勢いよく飛び込んだ。
「冷たっ……けど、気持ちいいです! さあさ、お二人も早く早く!
今日は日が暮れるまで思いっきり遊びますよ!」  
たとえ、今いるここがかつての故郷でなくても、 ともに楽しみ笑ってくれる家族が一緒にいるのであれば、 早苗にとってみれば、境界を跨ぐじょうしきをすてる前も今も、たいして変わらないのだった。