「フハハハハ!
その程度じゃこの私には届きやしないな!」
見下ろせば雲海の広がる場所、天界。
空に浮かぶ陸地が連なる場所では、高らかな笑いが響き渡っていた。
笑い声の主は、不良天人と悪名高い比那名居天子。
傲慢で自己中心で性格に一癖も二癖もある彼女だが、
だからといって根っからの悪人というわけではなく、単純に気分屋なだけである。
そんな、いつも退屈しのぎを探している天人様が、今回手を出したこと。
それは天界に海を生み出し、地上の人間を客人として誘い、一緒に遊ぶことだったり。
「水鉄砲の重さなんて、
私の実力でどうとでもカバーできるわ!
さあ、悔しかったら当ててみなさい!
ま、この私に当てられるとは思えないけど!」
水着を身にまとい、水鉄砲を二丁構え、素早く走り回る天子。
水に足をとられているにも関わらず、彼女は風のようにすばしっこい。
「あははは!
夏がこんなに楽しいものだったなんて!
ただ暑いだけじゃないのね、感心したわ。
わわっ。い、今のは危なかったわね!」
彼女自身が楽しそうで暇をつぶせるのなら、何よりもいいことだ。
そう、その暇つぶしがきっかけで、神社や結界が壊されるなんて事態になりさえしなければ……。