準備を終え、天界ビーチへとやってきた紅魔館こうまかん御一行。
日光対策として、夜に天界ビーチに行くつもりだった彼女たちだが、
当初の予定よりも早い時間――夕方ごろに現地に着いてしまった。
このままではスカーレット姉妹が日光のせいでまともに遊べないため、
夜になるまで時間を潰すことになったのだが……。
「夜まであとどれぐらいかかるのかしら……」
「せっかくビーチに来たのに
遊べないなんてつまらなーい!」
「あまり騒ぐものじゃないわよ、フラン。
吸血鬼たるもの、常に優雅でいないと」
「さっきから羨ましそうに周りを見ている
お姉さまにだけは言われたくないわ」
波打ち際を歩きながら、足で水をちゃぷちゃぷ鳴らすレミリアとフラン。
退屈な時間が原因で、姉妹喧嘩しまいげんかが勃発ぼっぱつしそうになったので、
門番の美鈴が間に入って仲裁しようとするが、なすすべなく八つ当たりされている。
このままではせっかくの夏が台無しになる――が、咲夜にとってはこれも想定内。
今まさに取っ組み合いを始めようとしていた主たちの間に割り込み、即興の手品を披露した。
「暇つぶしならこの十六夜咲夜にお任せを。
夜が来るまでの短い間ではございますが、
芸を披露させていただきます」
そう言いながら、咲夜は手品で布を出現させ、そこから鳩はとの群れを飛び立たせる。
それに拍手が起きる中で、さらなる手品を披露。
我がままな主と気まぐれな妹様の機嫌を無事に持ち直すことに成功する。
「主人の想い出を作ることも、
メイドの務めですから」
彼女がいる限り、紅魔館こうまかんで想い出が途切れることはないだろう。