「ええ、私が話せることであれば、
どんなことでもお話ししますわ」  
衣装づくりにスケジュール管理。裏方は常に日々の生活に追われている。 そんな裏方のひとつ、プロデューサー業に勤いそしむ霍青娥かくせいがは、 宮古芳香みやこよしかたちがリハーサルを行う中、天狗てんぐのインタビューに応じていた。   「『ゾンビを育てた、敏腕プロデューサー』ですか
……ふふ、嬉しい見出しですわね」
舞台から離れた上空をたゆたいながら、青娥は上品に笑う。 そして宣伝用の引き札をインタビュアーの天狗てんぐに渡しながら、彼女はゆっくりと語り始めた。   「彼女をプロデュースする上で気をつけていること
……そうですわね……。
まず、何よりも、そのかわいさをファンの方々に
どう伝えるかを考えるようにしていますわ」  
そう言いながら、青娥はアイドル衣装に身を包んだ大切なしもべを見下ろす。
「芳香ちゃんのかわいさは、
生きる死体だからこそのもの。
……そう、キョンシーという要素は
彼女の魅力を引き立てる大きな長所。
その長所を生かしたプロデュースをどのようにして
行うか……常にそのことばかり気にしています」  
興味深そうにメモを取る天狗てんぐは、さらなる質問を彼女にぶつける。
「死体のプロデュースなんて大変そう、ですか? いえいえ、かわいいかわいい芳香ちゃんの
ためですもの。大変なことはありません。
むしろ、彼女のファンを増やすためなら、
観客を全員キョンシーにして、
ファンとして生まれ変わらせるのも
いといませんわ」  
本気か冗談か、冷や汗を流すインタビュアーに、青娥はただ微笑みを返すのみだった。