多々良小傘たたらこがさは唐傘お化け。道ゆく人に声をかけ、驚かせるのが存在意義だ。
しかし、あまりにもかわいらしい風貌とその要領の悪さから彼女は人を驚かせることができずにいた。
このままではいけない。
なにか、驚かすこと以外に、自分にできることを探さないと――。
「さあ、みんな！
わちきの歌を聞いていってちょうだいな！」
そして見つけた、自分の長所を最大限に生かせる天職。
それは、最近幻想郷にやってきた新たな文化――アイドル活動だった。
「ファンサービスだって欠かさないよ。
ファンのみんな！ すぐにそっちに行くからね！」
傘を構えて助走をつけ、ステージから勢いよく跳躍。
そのまま唐傘に乗り、観客の上をふわりふわりと飛び回り始めた。
周囲にはカラフルな紙吹雪かみふぶきが舞っており、
観客席にいる子供たちは応援グッズをせわしなく振り、小傘にエールを送っている。
「こんなに注目される日が来るなんて
……アイドル、最高！」
太陽光という天然のスポットライトに照らされ、小傘の笑顔はキラキラ輝く。
貧弱な付喪神としてみんなにバカにされてきたが、そんな日々も今日で終わり。
大人気アイドル多々良小傘は、幻想郷に新たな風を吹かせるのであった。