なにを護まもればいいのか、なにを倒せばいいのか。 主あるじである霍青娥かくせいがは、そのすべてを宮古芳香みやこよしかに教えてくれる。 死体として、使い魔として、青娥の歪ゆがんだ愛情を受け取る芳香は、 無心に、無邪気に、与えられた任務をキョンシーとしてこなし、活躍する。   「青娥は物知りだからなー。言われたとおりに
すればどんなことでもなんとかなるんだー」
「……でも、どうして私は
青娥に付き従っているんだ?
そもそも、私はいつから
キョンシーになったんだっけ……?」  
命令されたとおりに動く、ただそれだけの生きる死体。 しかし、いくら脳が腐っているといっても、彼女の自我までは死んでいない。 時折、こうして自分の存在意義に疑問を持つことだってある。 だから、そのたびに、青娥は彼女を抱きしめるのだ。
「難しいことは考えなくていいのよ、芳香ちゃん。 あなたはただ、 私に言われたとおりに動けばいいの」  
よみがえりそうな記憶にそっと蓋をするように、芳香を優しく抱擁する。
「あー。青娥がそういうなら、
それが正しいんだろうなー。
分かった、難しいことを考えてると
頭が痛くなるから、何も考えないようにするぞー」  
青娥から向けられる歪ゆがんだ愛情の正体を、芳香は知らない。