異変の後に寺へと改装されたものの、聖輦船せいれんせんは未いまだに幻想郷の住民たちに親しまれている。
それは寺としてだけでなく、定期遊覧船や魔界への巡航船としても同様だ。
聖輦船せいれんせんが船として機能している際、その航行は自動航行になる場合がほとんどである。
しかし、それでも、村紗水蜜むらさみなみつは舵を握る。
どうして自動なのにわざわざ舵を握る必要があるのか――それは、彼女が船長であるからだ。
「いついかなる場合でも、
船のトラブルを解決できるように準備しておく。
それが聖輦船せいれんせんの船長として任命された、
私の責務ですからね」
昔よりもさまざまな者が乗るようになった聖輦船せいれんせん。
責任をもってその舵を握り、トラブルに対応する必要があるのだ。
「お寺にされちゃったときはどうしようかと
思ったけど、船の機能も残してくれて一安心です。
私は、この子がいないとダメだから。
仕事がなくなったら暇になっちゃいますしね」
船長としての責務を背負う村紗ではあるが、その様子はとても明るく、生き生きとしている。
「さあ、みんな準備はいい? 今日も天気は上々、
果てのない雲海が、私たちを迎えてくれてる。
目的地を再確認。取り舵かじいっぱい、ヨーソロー!」
今日もまた、キャプテンムラサの声とともに、聖輦船せいれんせんは幻想郷の空を行く――。